Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
むげつものがたり
無月物語
久生 十蘭
Read 無月物語 (むげつものがたり) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,485 characters · 36 screens
三条高倉宮の東南に後白河法皇の寵姫が隠れていた。江口の遊女で亀遊といい、南段で桜花の宴があったとき、喜春楽を舞って御感にあずかったという悧口者で、世間では高倉女御と呼んでいたが、毎月、月始めの三日、清水寺の籠堂でお籠りをすることを聞きつけると、走水の黒鉄という鉢叩きに烏面をかぶせ、天狗の現形で籠堂の闇に忍ばせて通じさせたうえ、基房の伽羅の珠数を落してこさせた。亀遊は基房の珠数を知っていたので、むずかしいことになりかけたが、走水の黒鉄が捕まったので、泰文の仕業だったことがわかった。黒鉄は磔木に掛けられて打たれたが、泰文の後楯があると思うのか、
「ほとほとに(女洞に掛けた言葉)舟は渚に揺るるなり、あしの下ねの夢ぞよしあし」
などと空うそぶいてみだらな和歌を詠み、面憎いようすだった。
後白河法皇の院政中は、口を拭っておとなしくさえしていれば、なにをしてもゆるされた寛大な時代だったが、泰文の放埓は度をこえているので、法皇も弱りきり、しばらく都離れのしたところで潮風に吹かれてくるがよかろうと、思いついて敦賀ノ荘へ流すことにした。
あばれだすかと案じられた泰文は、意外にも素直に勅を受け、二十騎ばかりの伴を連れて加茂川でひとしきり水馬をやってから、一糸纒わぬすッ裸で裸馬に乗り、京の大路小路を練りまわしたうえ、悠然と敦賀