Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

Read 無法者 (むほうもの) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,837 characters · 24 screens

Aozora Bunko

「フグの茶漬けとかを食べさしてくれる家があるそうですが、どこなんですの。」

「なあに、頼めばどこだって出来ますよ。」

「いいえ、あなたの御懇意な家……なんという家なんですの。」

志村はカクテルを飲んだ。

「わたくし、フグが大好きですから、ちょっと行ってみたくなりましたわ。なんという家が、教えて下さいません。お願いですのよ。」

「お願いだなんて……。」

庭のかなた、百日紅の白っぽい幹を交えて椿がこんもりと茂ってるのを背景に、大きな自然石が配置され、その石のたもとに、黄色い葉が僅か散り残ってる一群れの山吹があった。それに志村は眼をとめた。

「やまぶき、という家ですが……。」

「やまぶき、お菓子屋みたいな名前ですこと。」

笑いかけておいて、房代夫人は急に真面目になった。

「やまぶきだかなんだか存じませんが、わたくしが、その割烹旅館とやらへ、お伴しようではございませんか。それとも、わたくしのような肥っちょのお婆さんでは、いけませんかしら。」

志村は首をすくめた。

「分りましたよ。そう叱らないで下さい。」

房代夫人は片手を伸ばして、彼の手首を押えた。

「志村さん、すこし御冗談が過ぎますわよ。