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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Read 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 86,705 characters · 173 screens
「おお! あなたは田万里の――! あの、伴、伴大次郎の姉上――。」
街の小鬼
「どうもとんだことがあったものだ。」
「先生がやられなすったとは、ほとんど信じられん。」
「一刀のもとに先生を殺ったということだから、その相手の白覆面の曲者は、よほど腕の立つやつに相違ないて。」
下谷の練塀小路、今は主の変った法外流の道場で、門弟たちが集り、わいわい話し合っている。
大次郎と千浪が、法外先生の遺骨を守って下山し、江戸へ帰って半月ほどしてからで。
武者窓から西陽のさす道場の板敷きで、またしても雑談に花の咲く話題は、いつも先師法外先生の最期の噂ときまっている。
稽古後。
「それはそうに決まっておるが、なにしろ先生も御老体のことだったからな。」
と、一人が言う。
ほかのひとりが、
「伴先生は、その時、現場にいあわせなかったのか。」
「そうと見える。なんでも、上の山とかへ一夜登っておった後のできごとじゃそうな。」
「伴先生と言えば、山から帰ってから、先生の稽古は滅法荒くなったな。」
「稽古ぶりも、まるで別人のようじゃ。」
「顔も別人――。」
「これ! それを言ってはならぬ。