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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
Read 爆薬の花籠 (ばくやくのはなかご) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 101,908 characters · 204 screens
しかし帆村探偵の姿は、もうそこにはなかった。彼は風のように、いつともしれずこの部屋を出ていったのであった。
雷洋丸の船腹の損傷は、意外に大きく船は見る見る左へ傾いた。機関部もやられてしまって、船内の電灯は一時消えた。甲板には、救命艇の位置へいそぐ船客たちが、互いにぶつかり転り踏みつけあい、くらがりの中に、がやがや立ちさわいでいるばかりだ。
沈没までに、あと二十分とは、もたない。
房枝は、どこにいる。ニーナ嬢は、なにをしている。帆村探偵は、どこへいったのであるか?
このさわぎの中に、くらがりのマストのうえで、獣のように、からからと声をたてて笑いつづける者があった。誰も、さわぎの最中のこととて、この怪人物に気づく者はなかったが、この人物は、意外も意外、それは死んだとばかり思っていたトラ十であったではないか。
沈没迫る
ああ。なんという不運な雷洋丸よ!
もうあと一日たてば、母国の横浜港にはいれるところまで、もどってきたのだ。ところが、とつぜん、この大遭難である。これを不運といわないで、どうしようぞ。
なぜ、第一船艙が、とつぜん爆発したのであろうか?