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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
Read 爆薬の花籠 (ばくやくのはなかご) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 101,908 characters · 204 screens
そうなると、車が横になって、車内に一人の紳士が、よほどいそがしいと見えて、新聞をひろげて読んでいるのが見えた。
房枝は、にくらしげに、その自動車の行方を見つめていた。
「あら、あの自動車、あの工場へ入っていったわ」
房枝は、一大発見でもしたように、思わず声をたてた。だが、工場の玄関の前にとまったその自動車の中から、新聞をたたみながら降り立った紳士が、まさか房枝の会いたく思っている青年探偵帆村荘六であることには、気がつかなかった。なぜといって、二人の間にはかなりの距離があったのである。
もしも、あのとき、房枝が道の方に背を向けていなかったら、また、帆村荘六が、車内で新聞などを読んでいなかったら、二人のうちのどっちかが、
(おお、房枝さんだ)
(あら、帆村さん!)
と、こえをかけたであろうものを、運命の神は、時に、このようにいじわるなものである。
黒川は、どこまでいったのか、なかなか房枝のところへは帰ってこなかった。
「どうしたんでしょうね、新団長は」
房枝が、すこし不安になって、あたりを、きょろきょろ見まわしていると、そのとき、向こうの方から、一台の三輪車が、いきおいよく、こっちへ向けてはしってきた。