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ぎゅうにくとばれいしょ
牛肉と馬鈴薯・酒中日記
国木田 独歩
Read 牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (ぎゅうにくとばれいしょ) by 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 54,018 characters · 109 screens
初から他人なのだ。
自分は小供の時から母に馴染まなんだ。母も自分には極て情が薄かった。
明日は日曜。同勢四五人舟で押出す約束であるが、お露も連れこみたいものだ。
大河今蔵の日記は以上にて終りぬ。彼は翌日誤って舟より落ち遂に水死せるなり。酔に任せ起って躍りいたるに突然水の面を見入りつ、お政々々と連呼してそのまま顛落せるなりという。
記者去年帰省して旧友の小学校教員に会う、この日記は彼の手に秘蔵されいたるなり。馬島に哀れなる少女あり大河の死後四月にして児を生む、これ大河が片身、少女はお露なりとぞ。
猶お友の語るところに依れば、お露は美人ならねどもその眼に人を動かす力あふれ、小柄なれども強健なる体格を具え、島の若者多くは心ひそかにこれを得んものと互に争いいたるを、一度大河に少女の心移や、皆大河のためにこれを祝して敢て嫉もの無かりしという。
お露は児のために生き、児は島人の何人にも抱かれ、大河はその望むところを達して島の奥、森蔭暗き墓場に眠るを得たり。
記者思うに不幸なる大河の日記に依りて大河の総を知ること能わず、何となれば日記は則ち大河自身が書き、しかしてその日記には彼が馬島に於ける生活を多く誌さざればなり。