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ぎゅうにくとばれいしょ
牛肉と馬鈴薯・酒中日記
国木田 独歩
Read 牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (ぎゅうにくとばれいしょ) by 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 54,018 characters · 109 screens
実際ただ炭を見ていたのかも知れない、通りがかりだからツイ手に取って見ているところを不意に他人から瞰下されて理由もなく顔を赤らめたのかも知れない。まして自分が見たのだから狼狽えたのかも知れない。と考えれば考えられんこともないのである。真蔵はなるべく後の方に判断したいので、遂にそう心で決定てともかく何人にもこの事は言わんことにした。
しかし万一もし盗んでいたとすると放下って置いては後が悪かろうとも思ったが、一度見られたら、とても悪事を続行ることは得為すまいと考えたから尚お更らこの事は口外しない方が本当だと信じた。
どちらにしてもお徳が言った通り、彼処へ竹の木戸を植木屋に作らしたのは策の得たるものでなかったと思った。
午後三時過ぎて下町行の一行はぞろぞろ帰宅って来た。一同が茶の間に集まってがやがやと今日の見聞を今一度繰返して話合うのであった。お清は勿論、真蔵も引出されて相槌を打って聞かなければならない。礼ちゃんが新橋の勧工場で大きな人形を強請って困らしたの、電車の中に泥酔者が居て衆人を苦しめたの、真蔵に向て細君が、所天は寒むがり坊だから大徳で上等飛切の舶来のシャツを買って来たの、下町へ出るとどうしても思ったよりか余計にお金を使うだの、それからそれと留度がない。