Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

Read 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 105,794 characters · 211 screens

Aozora Bunko

たくみな陰をえらんだ縫い方は、人であるよりも、なにか、暗のくずれが澱んでながれているように、紛れやすいものであった。経之は近よったはぎ野が下枝の張った一位の木から、ほっそりとうかび出た姿はまぎれもないはぎ野であることを、近々と、はっきりと見取った。

「はぎ野。」

突然、はぎ野は立ち停まり、よろけるように、二、三歩あるき出したが、驚きと恐怖とで足が前にはこべないふうだった。

「はい。」

やはり低い、低いために注意ぶかく凝り固まったような、はぎ野だった。

「いずれに参らるる。」

「…………」

経之はぐいぐい近寄って行った。夜眼にも匂うような若い女の熱い顔は、実際、しきりに香気を夜気のなかにほとばらしているのだ。

「この夜半にいずれに赴こうとされる。」

返辞はなく、はぎ野はしだいに重く、うな垂れた。ほとんど、胸もとにくっ附くほどであった。

「お返辞あれ、黙っていては訳がわかり申さぬ。」

もう、はぎ野はうごくことも、声を出して返辞をすることも出来ないところに、趁いこまれていた。

「北の館に御油をつぎにまいります。」

「夜半に油の心配か。」

その時、だしぬけにはぎ野らしく、もう、永居してはと、りこうにも踵をかえそうとした。