Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Read 狂い凧 (くるいだこ) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 111,430 characters · 226 screens
「わしが詣りたいのは、多摩の御陵だ」
栄介は返事をしなかった。言葉の行違いがあったにしろ、折角ここまで来たのだから、ついでに弟夫婦や甥たちの骨の収まった墓所を見ようという気を、なぜ起さないのか。少し経って栄介は手を伸ばして、乱暴に扉をばたんとしめた。幸太郎を無視して、運転の青年に話しかけた。
「君。多摩御陵の場所、知ってるかね?」
「ちょっと調べて見ます」
青年は地図を取出した。
「あ。こりゃ相当遠いな。先生。八王子の先ですよ」
「すまないけれど、そこまで行って呉れないか」
「はい」
エンジンの音とともに車は動き出し、方向を変えた。そして風の強い街衢を一時間近く走り続けた。その間栄介は腕組みをしたまま、一言も口をきかなかった。やがて車は銀杏並木の道を走っていた。途中で右折すると、並木は欅に変る。欅の巨木は医書の神経図のような形に、梢を空に散らしていた。青年が言った。
「この突当りが御陵です」
「そうか。すこし徐行して呉れ」
車は速力をゆるめた。どぶ川にかかった古ぼけた橋名は『南浅川橋』と読めた。左手は低く運動場となり、野球をしている人々の動きが見えた。運動場は疎林に区切られ、その彼方に丘や山がかすんでいる。