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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Read 狂い凧 (くるいだこ) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 111,430 characters · 226 screens
「いや」
うどんを口に入れているので、城介の声はくぐもった。
「憂欝じゃないこともない。でも、ここで奉公するよりも――」
中学の中途退学では、まともな職はなかった。その頃は不景気の時代、学校出でもろくな職はなかったくらいだから。したがって仕事と言えば、どこかに奉公するしかなかった。福次郎は城介に、昼間は会社の給仕になり夜学に行ったらどうか、と勧めたが、城介は拒否した。
「僕はもう勉強はイヤになった」
勉強がイヤになったのではなく、正規の中学から夜学へ移る、その方にイヤさの重心がかかっていたのだ。この土地で奉公するのも、同じような意味で面白くなかった。事件の共犯者たちが通学しているのに、同じ街でこき使われる。
「どうせこき使われるなら、数百里離れた東京の方がいいと思ったんだよ」
酒と熱いうどんのために、二人の顔はほてって赤くなっていた。
「でも幸伯父は、葬儀屋なんて、へんな知合いを持ってるなあ」
栄介は言った。
「昨夜、お前がやり方を覚えて戻って来たら、開店の資金は出してやると言っていたな」
「酔っぱらっていたからだろう」
「いや。案外本気な口調だったぞ」
頭や体がじんじんするのを感じながら、栄介は言った。