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うりのなみだ
瓜の涙
泉 鏡花
Read 瓜の涙 (うりのなみだ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,247 characters · 21 screens
その癖、傍で視ると、渠が目に彩り、心に映した――あのたけた娘の姿を、そのまま取出して、巨石の床に据えた処は、松並木へ店を開いて、藤娘の絵を売るか、普賢菩薩の勧進をするような光景であった。
渠は、空に恍惚と瞳を据えた。が、余りに憧るる煩悩は、かえって行澄ましたもののごとく、容も心も涼しそうで、紺絣さえ松葉の散った墨染の法衣に見える。
時に、吸ったのが悪いように、煙を手で払って、叺の煙草入を懐中へ蔵うと、静に身を起して立ったのは――更めて松の幹にも凭懸って、縋って、あせって、煩えて、――ここから見ゆるという、花の雲井をいまはただ、蒼くも白くも、熟と城下の天の一方に眺めようとしたのであった。
さりとも、人は、と更めて、清水の茶屋を、松の葉越に差窺うと、赤ちゃけた、ばさらな銀杏返をぐたりと横に、框から縁台へ落掛るように浴衣の肩を見せて、障子の陰に女が転がる。
納戸へ通口らしい、浅間な柱に、肌襦袢ばかりを着た、胡麻塩頭の亭主が、売溜の銭箱の蓋を圧えざまに、仰向けに凭れて、あんぐりと口を開けた。
瓜畑を見透しの縁――そこが座敷――に足を投出して、腹這いになった男が一人、黄色な団扇で、耳も頭もかくしながら、土地の赤新聞というのを、鼻の下に敷いていたのが、と見る間に、二ツ三ツ団扇ばかり動いたと思えば、くるりと仰向けに