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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Read 生々流転 (しょうじょうるてん) by 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 297,521 characters · 586 screens
わたくしは「随分、たいへんなことになってきたのね」と、吐息と共に言いました。なお吐息を続けながら二言三言、先生の故郷のことなど葛岡に訊いていますと、女中が誂えものを運んで来ました。
いかだにした蒲焼、きも吸い、う巻の玉子焼。
二人は、ともかくも食事にかゝりました。風がだいぶ出て、門松の笹の葉の鳴る音や凧のうなり声が聞えます。障子に水飴色の陽が射して、ぽつん/\冬の蠅の障子紙に突当る音が聞えます。
葛岡は食べながら、
「下町の食いものはうまいね」
と言いましたが、鰻屋の料理なぞはよく食べ方を知らない様子なので、わたくしは葛岡に食品の説明をしてやりながら、きも吸いの椀の中に入っている縁起鉤に気をつけさせ、それを取出させて襟にかけることを教えました。
「その鉤に当った人は、その年きっと幸運を釣るというわ」と、言って、わたくしが苦笑しますと、葛岡はわたくしの言う通りその鉤を背広の襟元へ刺しながら、
「ちと、幸運でも見舞って呉れなくちゃ、正月から家出人の心配なんか、つく/″\有難くない」
と呟きました。
ところで妙なのはわたくしの心でした。先生の消息が暈けているうちは、まだ安心しているとは言いながら、心の底の方では重苦しく気がゝりでありましたが、こう事が顕わになって来ますと、却って気持がさっぱりしてしまって、たゞ上辺だけ