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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Read 生々流転 (しょうじょうるてん) by 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 297,521 characters · 586 screens
嘉六に家も遺産も預け、わたくしの決意を池上と葛岡とが必死と止めるのもきかずに、わたくしはさすらいの旅に出ます。
遁れて都を出ました。鉄道線路のガードの下を潜り橋を渡りました。わたくしは尚それまで、振り払うようにして来たわたくしの袂の端を掴む二本の重い男の腕を感じておりましたが、ガードを抜けて急に泥のにおいのする水っぽい闇に向うころからその袂はだん/\軽くなりました。代りに自分で自分の体重を支えなくてはならない妙な気怠さを感じ出しました。馴染といえばやっぱり男たちには女として無意識に縋り頼っていたところがあったものとみえます。いま、それが判って来ます。これが物事に醒めるとか冷静になったとかいうことでしょうか。
道は闇の中に一筋西に通っております。両側は田圃らしく泥の臭に混じった青くさい匂いがします。蛙が頻りに鳴いております。フェルト草履の裏の土のあたる音を自分で聞きながら、わたくしは足に任せて歩いて行きました。わたくしの眼にだん/\闇が慣れて来ますと道の両側に几帳面な間隔で電柱の並んで立っているのや、青田のところ/″\に蓮池のあるのや、おぼろに判って来ました。