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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Read 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,507 characters · 291 screens
」
「葬式……。誰が亡くなったのですか。」
「倉沢小一郎君が……。」
わたしは声が出ないほどに驚かされた。雇人は無言で俯向いていた。女給が運んで来た三つのコップは、徒らにわれわれの眼さきに列べられてあるばかりであった。
「あなたが京都へお立ちになった翌々日でした。」と、横田君はつづけて話した。「倉沢君は町へ遊びに出たといって、日の暮れがたに私の支局へたずねて来てくれたので、××軒という洋食屋へ行って、一緒にゆう飯を食ったのですが、その時に倉沢君は西瓜を注文して……。」
「西瓜を……。」と、わたしは訊き返した。
「そうです。西瓜に氷をかけて食ったのです。わたしも一緒に食いました。そうして無事に別れたのですが、その夜なかに倉沢君は下痢を起して、直腸カタルという診断で医師の治療を受けていたのです。それで一旦はよほど快方にむかったようでしたが、廿日過ぎから又悪くなって、とうとう赤痢のような症状になって……。いや、まだ本当に赤痢とまでは決定しないうちに、おとといの午後六時ごろにいけなくなってしまいました。西瓜を食ったのが悪かったのだといいますが、その晩××軒で西瓜を食ったものは他にも五、六人ありましたし、現にわたしも倉沢君と一緒に食ったのですが、ほかの者はみな無事で、倉沢君だけがこんな事になるというのは、やはり胃腸が弱って