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しろがねのえず
白金之絵図
泉 鏡花
Read 白金之絵図 (しろがねのえず) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,356 characters · 47 screens
「これ、これ、いやさ、これ。」
「しばらく! さりとても、令嬢様、御年紀、またお髪の様子。」
娘は髪に手を当てた、が、容づくるとは見えず、袖口の微な紅、腕も端麗なものであった。
「舞、手踊、振、所作のおたしなみは格別、当世西洋の学問をこそ遊ばせ、能楽の間の狂言のお心得あろうとはかつて存ぜぬ。
あるいは、何かの因縁で、斯道なにがしの名人のこぼれ種、不思議に咲いた花ならば、われらのためには優曇華なれども、ちとそれは考え過ぎます。
それとも当時、新しいお学問の力をもってお導き下さりょうか。
さりとて痩せたれども与五郎、科や、振は習いませぬぞよ。師は心にある。目にある、胸にある……
近々とお姿を見、影を去って、跪いて工夫がしたい! 折入ってお願いは、相叶うことならば、お台所の隅、お玄関の端になりとも、一七日、二七日、お差置きを願いたい。」
「本気か、これ、おい。」と家主が怒鳴った。
胸を打って、
「血判でござる。成らずば、御門、溝石の上になりとも、老人、腰掛に弁当を持参いたす。平に、この儀お聞済が願いたい。
口惜や、われら、上根ならば、この、これなる烏瓜一顆、ここに一目、令嬢を見ただけにて、秘事の悟も開けましょうに、無念やな、老の眼の涙に曇るばかりにて、心の霧が晴れませぬ。