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まゆかくしのれい
眉かくしの霊
泉 鏡花
Read 眉かくしの霊 (まゆかくしのれい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,284 characters · 51 screens
……弱ったな、どうも。実はね、あるその宴会の席で、その席に居た芸妓が、木曾の鶫の話をしたんです――大分酒が乱れて来て、何とか節というのが、あっちこっちではじまると、木曾節というのがこの時顕われて、――きいても可懐しい土地だから、うろ覚えに覚えているが、(木曾へ木曾へと積み出す米は)何とかっていうのでね……」
「さようで。」
と真四角に猪口をおくと、二つ提げの煙草入れから、吸いかけた煙管を、金の火鉢だ、遠慮なくコッツンと敲いて、
「……(伊那や高遠の余り米)……と言うでございます、米、この女中の名でございます、お米。」
「あら、何だよ、伊作さん。」
と女中が横にらみに笑って睨んで、
「旦那さん、――この人は、家が伊那だもんでございますから。」
「はあ、勝頼様と同国ですな。」
「まあ、勝頼様は、こんな男ぶりじゃありませんが。」
「当り前よ。」
とむッつりした料理番は、苦笑いもせず、またコッツンと煙管を払く。
「それだもんですから、伊那の贔屓をしますの――木曾で唄うのは違いますが。――(伊那や高遠へ積み出す米は、みんな木曾路の余り米)――と言いますの。」
「さあ……それはどっちにしろ……その木曾へ、木曾へのきっかけに出た話なんですから、私たちも酔ってはいるし、それがあとの贄川だか、峠を越した先の藪原、福島、上松のあたりだか、よく