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まゆかくしのれい
眉かくしの霊
泉 鏡花
Read 眉かくしの霊 (まゆかくしのれい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,284 characters · 51 screens
その松本には「いい娘の居る旅館があります。懇意ですから御紹介をしましょう」と、名のきこえた画家が添え手紙をしてくれた。……よせばいいのに、昨夜その旅館につくと、なるほど、帳場にはそれらしい束髪の女が一人見えたが、座敷へ案内したのは無論女中で。……さてその紹介状を渡したけれども、娘なんぞ寄っても着かない、……ばかりでない。この霜夜に、出しがらの生温い渋茶一杯汲んだきりで、お夜食ともお飯とも言い出さぬ。座敷は立派で卓は紫檀だ。火鉢は大きい。が火の気はぽっちり。で、灰の白いのにしがみついて、何しろ暖かいものでお銚子をと云うと、板前で火を引いてしまいました、なんにも出来ませんと、女中の素気なさ。寒さは寒し、なるほど、火を引いたような、家中寂寞とはしていたが、まだ十一時前である……酒だけなりと、頼むと、おあいにく。酒はないのか、ござりません。――じゃ、麦酒でも。それもお気の毒様だと言う。姐さん……、境は少々居直って、どこか近所から取り寄せてもらえまいか。へいもう遅うござりますで、飲食店は寝ましたでな……飲食店だと言やあがる。はてな、停車場から、震えながら俥でくる途中、ついこの近まわりに、冷たい音して、川が流れて、橋がかかって、両側に遊廓らしい家が並んで、茶めしの赤い行燈もふわりと目の前にちらつくのに――ああ、こう