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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
と阿賀妻が云いつづけた。彼らはこんな困難な旅の経験者なのだ。だからそれは命令であった。けれどもまた相談でもあった。昔のように強制することは出来ないのである。各々のものは同じ立場で同等の権利で談合を進め、納得しなければならない。
「こういうことでござる――」と、阿賀妻は湿っぽい地図をひろげて、指さしながら説明した、「倖い貴殿はあのものを生かして置いてくれたので、ひとたびこちらの原野――オヤフロの野と書きこまれているこの地点に立ち戻り、目ざすトウベツの山を見定め、しかる上はすべてわれ等の才覚にて行き着き得べしと考えるが、いかがでござろう? 予定の三日はむなしく過した、よって本日は最大の努力をいたしたい、ざっとこの間、七八里と見積ればよかろうか、――あやつ、捨て置き難きものなれど、残念ながらわれら一同、一向に土地不案内、トウベツはよき土地なりという風説のみにて、ありようは地形もしかと存ぜぬわれら――ご承知下さるか?」
無論それに異論のあろう筈はない。
「しからば――」
阿賀妻は人夫をさし招いた。
椀にくんだ水で食後の口を洗った戸田老人は、ごま塩の長い眉毛をつきだして大野順平に話しかけた。