Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
阿賀妻は腰の刀を取って左手に持ち、床柱にもたれて立っていた。大きな呼吸を吐いた。頭をふってみた。酔っているためだろう、われながらむかむかして、坐る気になれなかった。それをもう一人の平静な彼がどこかで眺めていた。油断してはならぬというそのものの声と、何をこれしきのことと――鼻で嘲けるいらいらした声が、彼の頭のなかで喚きあっていた。
――平静な彼は、こういう家中の空気もあり得るものとして感じ取っていた。そのことを一番つよく懸念していたのも阿賀妻であり、従って、その責任を取らねばならぬのもむろん彼であった。そういう立場を彼はそのまま肯定している。それ故にまた彼は、あたえられた任務にどこまでも耐えようとした。どっかりと腰をすえ、耐え得るものと自ら信じていた。彼のおかれた位置は、そうするより他に手がなかった。少しも無理のない――流れる水のようなものであった。心配召さるな、と、彼は今朝がたも隠居の舅たちに云った。それでも舅は婿の身を気づかって下男を供につけた。墓参を済ましたところに邦夷の使いであった。――何と云われましょうとも、と彼はお答えした、――これを措いて、われらの生きるすべはございませんです、自信をもって、と彼は口を結んだ。