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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens

Aozora Bunko

大沼は残った家臣らのことをそう云った。六百何十戸を数える大部分の家臣と、その家族の千何百人かは、梃子でも動かなかったのである。

「殿は、よし、よしと云われました」と、彼はつづけた、「そこで概数のお知らせをあなたのもとまで飛ばせましたが」

「それで結局のところ?」

「四十四戸の百八十二名――」

「四十四戸――」と、くりかえして、阿賀妻は目をつぶった、「あちらの四十三戸と合せての八十七戸か、――よろしい、赤穂の浪士にくらべたならば、ざっとこれ、二倍というところ、心づよい」

大沼喜三郎は何も云わなかった。

――しずかに考えてみれば、すでに彼らの間は、昔の主君、昔の家臣の係りでしかなかったのだ。彼らの代々の城主が、この土地に養っていた家臣は、いつの間にか、それはまた分封された自分の小さな土地に於いては主であった。城主に生殺与奪の権が喪われてしまえば、こんどは彼らが自分で自分の身をまもらねばならぬ。恩顧というようなものに対しては、ながい屈服の礼が充分にむくいたと思うのであった。差引き勘定をしたならば、まだ自分の方に剰り銭が戻らなければならぬような気がする。主君と思えばこそ、せっかく、これを機会に、まごころ込めて無謀な移住を思いとどまらしめようとした。