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しんろのまき

神鷺之巻

泉 鏡花

Read 神鷺之巻 (しんろのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,672 characters · 54 screens

Aozora Bunko

ああ、いいわねえ、そうしましょうか。

思出しても身体がふるえる、……

今年二月の始でした。……東京も、そうだったって聞いたんですが、この辺でも珍らしく、雪の少い、暖かな冬でしたの。……今夜の豆撒が済むと、片原で年を取って、あかんぼも二つになると、隠居たちも笑っていました。その晩――暮方……

湯上りのいい心持の処へ、ちらちら降出しました雪が嬉しくって、生意気に、……それだし、銀座辺、あの築地辺の夜ふけの辻で、つまらない悪戯をされました覚えもなし、またいたずらに逢ったところで、ところ久しいだけ、門なみ知っているんです。……梅水のものですよ。それで大概、挨拶をして離れちまいますんですもの、道の可恐さはちっとも知らずにいたんです。――それに牡丹亭のあとまでは、つれがありましたり、一人でも幾度も行ったり来たり、屋根のない長い廊下もおんなじに思っていましたものですから、コオトも着ないで、小県さん、浴衣に襟つき一枚何かで。――裙へ流れる水、あの小川も、梅水に居て、座敷の奥で、水調子を聞く音がします。……牡丹はもう、枝ばかり、それも枯れていたんですが、降る雪がすっきりと、白い莟に積りました。