Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんろのまき
神鷺之巻
泉 鏡花
Read 神鷺之巻 (しんろのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,672 characters · 54 screens
」
再び巨榎の翠の蔭に透通る、寂しく澄んだ姿を視た。
水にも、満つる時ありや、樹の根の清水はあふれたり。
「ああ、さっき水を飲んだ時でなくて可かった。」
引立てて階を下りた、その蔀格子の暗い処に、カタリと音がした。
「あれ、薙刀がはずれましたか。」
清水の面が、柄杓の苔を、琅のごとく、梢もる透間を、銀象嵌に鏤めつつ、そのもの音の響きに揺れた。
「まあ、あれ、あれ、ご覧なさいまし、長刀が空を飛んで行く。」……
榎の梢を、兎のような雲にのって。
「桃色の三日月様のように。」
と言った。
松島の沿道の、雨晴れの雲を豆府に、陽炎を油揚に見物したという、外道俳人、小県の目にも、これを仰いだ目に疑いはない。薙刀の鋭き刃のように、たとえば片鎌の月のように、銀光を帯び、水紅の羅して、あま翔る鳥の翼を見よ。
「大沼の方へ飛びました。明神様の導きです。あすこへ行きます、行って……」
「行って、どうします? 行って。」
「もうこんな気になりましては、腹の子をお守り遊ばす、観音様の腹帯を、肌につけてはいられません。解きます処、棄てます処、流す処がなかったのです。女の肌につけたものが一度は人目に触れるんですもの。