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わたしのかつどうしゃしんぼうかんし
私の活動写真傍観史
伊丹 万作
Read 私の活動写真傍観史 (わたしのかつどうしゃしんぼうかんし) by 伊丹 万作 (いたみまんさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,073 characters · 30 screens
話を元へもどす。
常設館は世界館というのが中学一年のときに始めてでき、つづいてその翌年あたり松山館というのもできた。
世界館の開館のときの写真は松之助の「宮本武蔵」であつた。松之助、関根達発、立花貞二郎などという名まえをこの館で覚えた。松山館では山崎長之輔、木下録三郎、沢村四郎五郎、井上正夫、木下八百子などを覚えた。
西洋物では「名馬天馬」などという写真が松山館に現われた。
松山館の弁士はよく「空はオリーブ色に晴れ渡り絶好の飛行びより」と謡うように言つた。オリーブ色の空というのはいまだによくわからない。
井上の写真はわずかであつたが、翻案物の「地獄谷」というのを憶えている。
自分のすまいの関係から中学三年ごろは松山館のほうを多く見、四年五年ごろは世界館のほうを多く見た。五年のころには松之助の似顔絵が上手になり、友だちなどに見せて得意になつていた。
似顔をよく似せるために私は松之助の写真について顔の各部を細かく分析して研究したが、彼の眼が普通の人々よりも大きいとは認められなかつた。彼の顔の中で普通の人よりも大きいのは口だけであつた。ことに下唇の下に鼓の胴を横にしたような形の筋肉の隆起があつたが、これは松之助を他の人と区別する最も著しい特徴であつた。