Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Read 私本太平記 (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 116,638 characters · 233 screens
「まだ、親房がいたものを」
と、希望をあらたにさせられていた。
親房に接しると、彼女は、先帝の大どかさやよけいな肉をすべて削ぎ去った知性と信念の凝りかたまりを見るようで、いつも一種のきびしさに打たれる。
後醍醐にたいしてはずいぶん俗にいう“姉さん女房”であった廉子も、親房へは、かりそめにも異議はおろか戯れ一ついえなかった。そして往々に「先帝の御遺志は不肖わたくしのうちに在る」と言い、「わたくしを通して先帝の御遺志はそのままみかど(後村上)へおつたえ申し奉るつもりでおります」とも言っている親房だった。
従一位准三后という身分も廷臣最高だし、先帝の信任もたれより厚かったひとである。廉子でさえ、こわいのである。
自分が養父となってお預りしていた皇子が病死したときに、頭をまるめて、はやくに政治のおもてからは退いていたが、しかし、後醍醐生前のおもなる画策はみなこの亜相の禅門から出ていたといわれ、その眼界のひろさや智謀神算の尽きないことでは南朝朝廷のうちこのひとの右に出る者はない。
いや北畠親房の真骨頂は、もっとべつな面だといえよう。
学識だった。
彼は同時代の武士や権門のほとんどが欲望のために戦うだけで、無理論、無反省であったのとちがって、この乱世にむかっても自己の処し方とつよい理念をもっていた。