Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Read 私本太平記 (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 116,638 characters · 233 screens
「身に大任を蒙りながら、たとえ幾日にせよ、前線を空けて来たなどは、まったく、正行の不覚でした。さっそく駈けもどりまする。面目しだいもございません」
「いや、わかったらそれでいい。せっかく武勲かんばしい楠木廷尉の子なればこそ、その子の名をも惜しむのだ。わしの言は、父正成がいうものとして聞くがよい。……な。親房のこの姿も目に入るであろうが」
と、法衣のうえの黒革の腹巻を、たたくように示して。
「わが身すら、きょうの軍議の決で、すぐ武装いたしたのだ。親房が身を鎧うなどはめッたにはないことぞ。――したが聞えによれば、尊氏はこんどの出兵をもって、南朝絶滅の総ざらいのいくさと称え、高ノ師直、師泰を二大将とする軍のほか、さらに仁木、今川、細川、県、宇都宮、武田、佐々木(道誉)などの諸将をも、なおぞくぞく戦場へそそぎこんでいるという。――そして直義は男山に陣し、師直は河内へ入って東条を突き、また師泰は和泉へ攻め入る戦法とか。――これはゆゆしい。和泉のお味方はほとんど手薄だ。それゆえ親房自身、明日はここを立って、和泉へ向うつもりでおる」
「…………」
「さような時も時なる折に、敵の真正面にあたるべき帯刀正行が、一夜を母のふところへ帰って寝、また一日を悠々と、ここの行宮になど罷り出て来てよいものか。