Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Read 私本太平記(四) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 229,324 characters · 458 screens
「危急というほどなことはあるまい」
「ご悠長な。あの佐々木道誉めの布陣は、あきらかに、われらへむかって、ござンなれと誇っているのに」
「だからといって、道誉と戦わねばならんという法がどこにある」
「しゃッ、まだそんなぬるいお考えでおいでるのか」
「直義」
高氏はちょっと眸をつよめて。
「すこしおちつけ。そちを弟として幼少からよく知っていたつもりだが、鎌倉をはなれていらい、どうもおぬしは少しいぜんの直義とは、ちがって来ておる」
「ちがってなどおりません」
「いや大事に立ちむかうと、自分も知らぬ自分が出てくる。ここでいっておくがの」
「なにをです」
「矢作でやったような、下策な暴挙は、以後つつしめ。気が短うては事を破る」
「気長になれと仰っしゃるのですか。いま、このような難関を前にしても」
「気長にとはいわん。ただ望みをとげようためには、何事も忍び、また遠くも思わねば」
「したが、ぐずぐずしていれば、道誉は気負う、後ろから鎌倉の討手がかかる。われらはここで立ち往生だ。自滅のほかはありますまいが」
「なんの」
頬を和んで見せながら。
「わしと道誉とは十年の交わりだ。その間、互いのもつれはしばしばだったが、要するにみな些事小事、意趣遺恨とするには足らん。