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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Read 私本太平記(四) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 229,324 characters · 458 screens
刻々、変ってゆき、また悪くばかりなってゆく国々の形勢図が、波と聞え、眼にも見えるここちがする。
「……だのに、寝てござる」
愍笑を、禁じえない。
いま、耳にした六波羅飛報によれば。
――そのご、行方も知れず、といわれていた大塔ノ宮護良親王は、先頃来、こつねんと吉野山の愛染宝塔に拠って砦をきずき、諸国へむかって、公然、
“義兵ヲ募ル”
の令旨を発しているという。
また。とかくこの鎌倉では「名もない土豪の小さかしい野心沙汰」と見て、軽視の風がある楠木正成も、赤坂から千早への築城を完了し、金剛山一帯は、今やひとつの連鎖陣地をなして来たともつたえている。
その楠木と大塔ノ宮とが、歯と唇のように密接なのは、いうまでもない。――いわばその二つの主峰は、一時雲に隠れていたものが、ふたたびその健在な姿を、巍然と、雲表にあらわしたものといっていい。
はやくも、それにこたえて。
播磨では、赤松円心に、二心の準備がみえ、備前の児島党、松田党などもまた、いつでも、呼応の姿勢にある。
四国の河野党も怪しい。九州の菊池党も、どうやら、あぶない。なお疑えば、あなたこなたに、宮方色は、日にまし、多くなりつつある模様。