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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
Read 空襲葬送曲 (くうしゅうそうそうきょく) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 95,012 characters · 189 screens
「紙洗大尉どの、井筒副長どのが、至急お呼びであります」
「おお、そうか。直ぐに参りますと、そう御返事申上げて呉れい」
紙洗大尉は、傍の帽子掛けから、帽子と帯剣とを取ると、身繕いをした。
「直ぐ帰って来るからな、一服しとれよ」
そう云って彼は敏捷に、部屋から出て行った。
だが其の紙洗大尉は、二十分経っても、三十分経っても、帰って来なかった。一時間の時間が流れても、彼の靴音は、聞えなかったので、二人の同期の友人は、云い合わせたように立上った。
「どれ、部屋へ帰って、今のうちに、辞世でも考えて置こうかい」
「俺は、いまのうちに、たっぷり睡って置こうと思うよ」
そこへ、紙洗大尉が、飛ぶようにして、帰って来た。
「おいどうした」
「大いに深刻な顔をしているじゃないか」
紙洗大尉は、二人の友人の問を、其儘聞き流して、ジッと立っていた。
「おい、どうしたのかと云ったら!」
そういった友人の、情深い手は、紙洗大尉の肩にかけられた。
「うん、大したことでは無い」彼は遂に口を開いた。「唯、天佑というものが今度の場合にも、お互に必要なのだ。いずれ判るだろうがね」
「ははァ、そんなことか」