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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
Read 空襲葬送曲 (くうしゅうそうそうきょく) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 95,012 characters · 189 screens
市内電車は、路面に停車し、車内の電灯は真暗に消されていた。これは、架空線とポールとが触れるところから、青い火花が出て、それが敵機に発見される虞れがあるからだった。
それは弦三の目算違いだった。彼は、雷門まで出ると、地下鉄の中に、もぐり込んだ。
地下鉄の中には、煌々と昼を欺くような明るい灯がついていた。だが、暗黒恐怖症の市民が、後から後へと、ドンドン這入りこんでいて、見動きもならぬ混雑だった。
「ここん中へ入っとれば、爆弾なんか、大丈夫ですよ」五十近い唇の厚い老人が、たった一人で、こんなことを喋っていた。
「全くですネ。近頃のお金持は、てんでに自分の屋敷の下に一間や二間の地下室を持っているそうですが、儂たちプロレタリアには、そんな気の利いたものが、ありませんのでねえ」
そう云ったのは、長髪の、薄気味わるい眼付の男だった。
「お蔭さまで、助りますよ」歯の抜けたお婆さんが、臍繰り金の財布を片手でソッと抑えながら、これに和した。
「だが、毒瓦斯が来ると、この孔の中は駄目になるぜ。駅長に云って、早く入口の鉄扉を下ろさせようじゃないか」会社の帰りらしい洋服男が、アジを始めた。