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ぬすむおんな
窃む女
黒島 伝治
Read 窃む女 (ぬすむおんな) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,734 characters · 18 screens
しかし、清吉が病気に罹って、ぶら/\しだしてから、子供の要求もみな/\聞いてやることが出来なくなった。お里は、家計をやりくりして行くのに一層苦しみだした。
暮れになって、呉服屋で誓文払をやりだすと、子供達は、店先に美しく飾りたてられたモスリンや、サラサや、半襟などを見て来てはそれをほしがった。同年の誰れ彼れが、それぞれ好もしいものを買って貰ったのを知ると、彼女達はなおそれをほしがった。
「良っちゃんは、大島の上下揃えをこしらえたんじゃ。」
お品は縫物屋から帰って来て云った。
「うち(自分のこと)毛のシャツを買うて貰おう。」次女のきみが云った。
子供達は、他人に負けないだけの服装をしないと、いやがって、よく外へ出て行かないのだ。お品は、三四年前に買った肩掛けが古くなったから、新しいのをほしがった。
清吉は、台所で、妻と二人きりになると、
「ひとつ山を伐ろう。」と云いだした。
お里はすぐ賛成した。
山の団栗を伐って、それを薪に売ると、相当、金がはいるのであった。
二
正月前に、団栗山を伐った。樹を切るのは樵夫を頼んだ。山から海岸まで出すのは、お里が軽子で背負った。