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かまどのなかのかお
竈の中の顔
田中 貢太郎
Read 竈の中の顔 (かまどのなかのかお) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,439 characters · 15 screens
「私は、この山の上に庵を結んでおりますよ」
僧は起って菅笠を頭に載せていた。
「では、またお対手が願えますな、なんなら明日あたり、またお対手が願えますまいか」
「まいりましょう、私は碁と聞くとたまらない、明日も明後日も、気が向いたら、毎日でも来てお対手をしましょう」
「それはかたじけない、私は退屈で毎日困っておるところじゃで」
「では、復た明日お目にかかります」
僧はそのまま簷下を離れて路へおり、夕陽の光の中を鳥の飛ぶように坂上の方へ登って往った。
「あんなお坊さんが、このあたりにおったか、なあ」
主翁は気が注かなかったと云うようにした。
「お前さんは気が注かなかったのか」
三左衛門はもう温泉のことを考えていた。
「今日まで気が注きませんでした、さあ、どこにおりましょう、この辺は、あんなお坊さんが好く往来しますから」そう云って主翁は何か思いだしたように、「そのお坊さんの中には、いろんなお坊さんがありますから、うっかりお坊さんと知己になってはいけませんが、あのお坊さんなら大丈夫でございましょう」
「何か坊主について、かわった話でもあるかな」
「へえ、おかしな話がありますよ、この山の中に、怪しいお坊さんがいて、そのお坊さんのことを云う者があると、そのお坊さんに生命を奪られると云いますが、それがどんなことやら、べつに何人が生命