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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Read 竹柏記 (ちくはくき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,798 characters · 91 screens
気になるのは八束のことで、役所が同じだから(部屋は離れていたが)姿は毎日みかけるけれども、かたくなに、こちらを無視するようすで、なにを考えているのか、まったく見当がつかない。
――わかって呉れたのだろうか。
そう思いたいが、あんな、ならず者などを使うところまで、つきつめたのを考えると、とうていそうは信じられなかった。
――ではどんな要求をもちだすだろう。
――そして、それはいつのことだろうか。
あのときのようすでは、金の必要に迫られていたらしい。どんな理由の金か、もちろんわからないが、単にこっちを困らせるためだけではなかったようだ。とすれば、その金の問題もかかってくる、と思わなければならない。
――おそらく、もっとも効果的なときに、もっとも効果的な手を打ってくるつもりに、相違ない。
こんなふうに、いろいろと思いまわして、祝言の当日まで、孝之助はおちつかなかった。
その日は、午後から雨になった。
武家のことだし、家に病人もあるので、式はごく質素にし、客も最少限に、ということであったが、それでも、双方の近い親族だけで七家あり、ぜんぶの招客を合わせると、三十人以上になった。