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だいにこんにゃくぼん
第二菎蒻本
泉 鏡花
Read 第二菎蒻本 (だいにこんにゃくぼん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,739 characters · 32 screens
ぴたりと後手にその後を閉めたあとを、もの言わぬ応答にちょっと振返って見て、そのまま片手に茶道具を盆ごと据えて立直って、すらりと蹴出しの紅に、明石の裾を曳いた姿は、しとしとと雨垂れが、子持縞の浅黄に通って、露に活きたように美しかった。
「いや。」
とただ間拍子もなく、女房の言いぐさに返事をする、俊吉の膝へ、衝と膝をのっかかるようにして盆ごと茶碗を出したのである。
茶を充満の吸子が一所に乗っていた。
これは卓子台に載せると可かった。でなくば、もう少し間を措いて居れば仔細なかった。もとから芸妓だと離れたろう。前の遊女は、身を寄せるのに馴れた。しかも披露目の日の冷汗を恥じて、俊吉の膝に俯伏した処を、(出ばな。)と呼ばれて立ったのである。……
お染はもとの座へそうして近々と来て盆ごと出しながら、も一度襖越しに見返った。名ある女を、こうはいかに、あしらうまい、――奥様と云ったな――膝に縋った透見をしたか、恥と怨を籠めた瞳は、遊里の二十の張が籠って、熟と襖に注がれた。
ト見つつ夢のようにうっかりして、なみなみと茶をくんだ朝顔形の茶碗に俊吉が手を掛ける、とコトリと響いたのが胸に通って、女は盆ごと男が受取ったと思ったらしい。