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だいにこんにゃくぼん
第二菎蒻本
泉 鏡花
Read 第二菎蒻本 (だいにこんにゃくぼん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,739 characters · 32 screens
その時、待合の女房が、襖越に、長火鉢の処で、声を掛けた。
「染ちゃん、お出ばなが。」
俊吉はこれを聞くと、女の肩に掛けていた手が震えた……染ちゃんと云う年紀ではない。遊女あがりの女をと気がさして、なぜか不思議に、女もともに、侮り、軽んじ、冷評されたような気がして、悚然として五体を取って引緊められたまで、極りの悪い思いをしたのであった。
いわゆる、その(お出ばな)のためであった、女に血を浴びせるような事の起ったのは。
思えば、その女には当夜は云うまでもなく、いつも、いつまでも逢うべきではなかったのである。
はじめ、無理をして廓を出たため、一度、町の橋は渡っても、潮に落行かねばならない羽目で、千葉へ行って芸妓になった。
その土地で、ちょっとした呉服屋に思われたが、若い男が田舎気質の赫と逆上せた深嵌りで、家も店も潰した果が、女房子を四辻へ打棄って、無理算段の足抜きで、女を東京へ連れて遁げると、旅籠住居の気を換える見物の一夜。洲崎の廓へ入った時、ここの大籬の女を俺が、と手折った枝に根を生す、返咲の色を見せる気にもなったし、意気な男で暮したさに、引手茶屋が一軒、不景気で分散して、売物に出たのがあったのを、届くだけの借金で、とにかく手附ぐらいな処で、話を着けて引受けて稼業をした。