Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Read 細雪 (ささめゆき) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 226,715 characters · 431 screens
鯛について特別に神経質な彼女は、慌ててそれを一杯の酒と一緒に飲み下して、それきり暫く箸を置いた。見渡したところ、彼女の食慾をそそるものは若鮎の塩焼だけであるが、これはさっき、未亡人が礼を云っていたところから察すると、沢崎が氷詰めにして土産に持って来たものを、この家で焼いて出したので、仕出し屋の料理とは違うらしい。
「雪子ちゃん、鮎を戴きなさいな」
幸子は自分が気の利かない質問をしたのが因で、座を白けさせたことを思うと、何とか取り繕わなければならないのであったが、沢崎には寄り着きにくいので、仕方なく雪子に話しかけた。が、最初から一と言も物を云う機会がなくて、じっと俯向いてばかりいた雪子は、
「はあ、………」
と、纔かに頷いただけであった。
「雪子さんは、鮎がお好きなのでございますか」
と、未亡人が云った。
「はあ、………」
と、雪子がもう一度頷いたあとを、幸子が受けて、
「鮎は私も大好物なのでございますが、妹は私以上に好きなのでございまして、………」
「まあ、それは宜しゅうございました。本日はほんとうに田舎料理で、何もお口に合うようなものがございませんので、当惑致しておりましたが、沢崎さんからこの鮎を戴きましたので、………」