Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Read 細雪 (ささめゆき) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 194,628 characters · 371 screens
「あかん、あかん、此処では出えへん」
と、妙子は「お婆ちゃん」の真似がしたくなるのを怺えながら云った。
「今日は皆さん、船へお越しでしたんですか」
そう云いながら、親爺は蝦の肉を開いて、飯のかたまりの上へ載せると、五六分ぐらいの幅に庖丁を入れた。そして、妙子と雪子の前に一つ、貞之助と幸子の前に一つ、その鮨を置いた。頭を除いた大きな車海老の一匹がそのまま鮨になっているのを、一人で一つ食べてしまうと、あとの鮨が這入らなくなるので、貞之助達は一つを二人で食べることにしているのであった。
「ふん、ちょっと人を見送りかたがた、シャルンホルスト号を見物に。―――」
貞之助は食塩の容器を倒にして、味の素を混和したサラサラに乾いた粉末を、まだ肉が生きて動いている車海老の上へ振りかけると、庖丁の目のところから一と切れ取って口に入れた。
「独逸の船は豪華船云うても、亜米利加のんとえらい感じが違うわな」
幸子がそう云うと、
「ほんに」
と、妙子が云った。
「いつかのあの、プレシデント・クーリッジとはえらい違いやわ。あの船は何処もかも白い明るい色してたけど、独逸の船は塗ってある色が陰気で、何や軍艦みたいやわ」