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るこうしんそう

縷紅新草

泉 鏡花

Read 縷紅新草 (るこうしんそう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 24,566 characters · 48 screens

Aozora Bunko

樹下石上というと豪勢だが、こうした処は、地蔵盆に筵を敷いて鉦をカンカンと敲く、はっち坊主そのままだね。」

「そんなに、せっかちに腰を掛けてさ、泥がつきますよ。」

「構わない。破れ麻だよ。たかが墨染にて候だよ。」

「墨染でも、喜撰でも、所作舞台ではありません、よごれますわ。」

「どうも、これは。きれいなその手巾で。」

「散っているもみじの方が、きれいです、払っては澄まないような、こんな手巾。」

「何色というんだい。お志で、石へ月影まで映して来た。ああ、いい景色だ。いつもここは、といううちにも、今日はまた格別です。あいかわらず、海も見える、城も見える。」

といった。

就中、公孫樹は黄なり、紅樹、青林、見渡す森は、みな錦葉を含み、散残った柳の緑を、うすく紗に綾取った中に、層々たる城の天守が、遠山の雪の巓を抽いて聳える。そこから斜に濃い藍の一線を曳いて、青い空と一刷に同じ色を連ねたのは、いう迄もなく田野と市街と城下を巻いた海である。荒海ながら、日和の穏かさに、渚の浪は白菊の花を敷流す……この友禅をうちかけて、雪国の町は薄霧を透して青白い。その袖と思う一端に、周囲三里ときく湖は、昼の月の、半円なるかと視められる。