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じさくしょうぞうまんだん
自作肖像漫談
高村 光太郎
Read 自作肖像漫談 (じさくしょうぞうまんだん) by 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,162 characters · 9 screens
これは昭和十年の一周忌に作り上げた。今上野の美術学校の前庭に立っている。この肖像には私の中にあるゴチック的精神と従ってゴチック的表現とがともかくも存在すると思っている。肩や胸部を大きく作らなかったのは鋳造費用の都合からの事であり、彫刻上の意味からではない。亡父の事を人はよく容貌魁偉というが、どちらかというと派手で、大きくて、厚肉で、俗な分子が相当あり、なかなか扱いにくい首である。私は父の中にある一ばん精神的なものを表現する事につとめたつもりである。
私が日本へ帰ってから初めて人にたのまれて肖像を作ったのは園田孝吉男の胸像であった。相州二の宮の園田男別邸へ写生に行ったり、その著書「赤心一片」を精読したりしてほぼ見当をつけて作った。男は長く十五銀行の頭取だった人で、戦時献金運動の早期主唱者であった。その当時は最善を尽したのだが今日見ると製作にまだ疎漏なものがある。大震災の時男は二の宮邸で亡くなられたが、震災後、東京の邸宅でその胸像を再び見る機会を得た。ブロンズの色が美しくなっていた。
その後私は日本の彫刻界にあまり立ち交らないような事になったので、私自身に直接に註文してくる人はめったになかった。