Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
Read 花も刀も (はなもかたなも) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 89,364 characters · 178 screens
当番の門人に「買物をして来る」と断わって、潜り門から外へ出たが、どこへゆくというあてはなかった。時刻はまだ八時まえだろう、あまり商家がないので、町は暗く、ひっそりとした道の上にかなり強く風が吹いていた。
――どこへゆこう。
ぼんやりと一丁ばかりいったとき、うしろから辻駕籠が来て声をかけた。お安くまいりましょう、と云われ、ついそのまま乗ってしまった。どちらまでと訊かれたので、賑やかなところでおろしてくれと答えた。
「なか(吉原)はいかがです。なかへやっておくんなさいな旦那、お安くまいりますぜ」
「そんな金はない、一杯飲むだけだ」
「一杯めしあがるお金があるんなら、結構なかで遊べますぜ、旦那はもちろん御存じだろうが、通な遊びは小格子ってえますからね、大店は田舎者の遊ぶところだから、ばかな金をふんだくられるだけでさ、そこへいくと小格子はちょくで情があって――」
深喜は心が動いた。
駕籠舁の言葉をそのまま信じたわけではないが、全然でたらめだとも思わなかった。かれらは廓の事情に通じているだろうし、自分たちの駕籠へ乗せた以上は客である。まさか客を騙すようなことはあるまい。