Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
Read 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,626 characters · 26 screens
「――――」
それを聴いたおよつ、芳年の腕の中に、必死の眼を見開きました。
「聴いたか、およつ、――あれで、何も彼も解ったろう。改めて言うまでもないが、――俺は唯の絵描きだ。世の態、人の姿は描くが、訴人や企らみをする柄ではない、――俺の言葉も耳に掛けず、お前は飛んだ早まったことをしてくれたじゃないか」
「――――」
「どうせ勤めをしたお前だ。馴染も深間もあったところで、俺はそんな事でヤキモキするものか」
静かに説く芳年、隣の庭からは官兵が引揚げて、お浜のいそいそとした姿が、それを送って出た様子まで手に取るよう。
「お前さん」
「解ったか、およつ」
「堪忍しておくれ、私は――」
今死ぬおよつの眼には、初めて油のような涙が沁み出しました。
「解ったらそれでよい。傷は浅い。静かに手当をするが宜い」
「いえ、私は助からない。助かり度くもない、――お前さんに済まないけれど、私は、私は欽さんの後が追って行き度い」
およつは声もなく、芳年の膝の上に、身を顫わせて泣くのです。
「それも解っている、どうせこの俺とは浅い縁だ」
「堪忍して」
「可哀想に、――お前という女は」
「お前さん、――たった一つの願い、聴いてください」