Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

よしとししゃせいちょう

芳年写生帖

野村 胡堂

Read 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,626 characters · 26 screens

Aozora Bunko

「居たぞ居たぞ」

バラバラと押っ取巻く官兵、ギラリギラリと幾条かの刃が芳年の眼に焼け付きました。

「あッ、お許し」

驚き騒ぐ芳年、桐油を引きられて襟髪を掴まれたまま、二つ三つ小突き廻されます。

「何者だッ、うぬッ」

「お許し、お許し下さりませ。私は怪しい者じゃございません」

行儀の悪い猫の子のように摘み上げられた芳年は、意気地無くもガタガタ顫え乍ら、両手を合せて居ります。

「怪しくないことがあるものか。其処で何をして居た」

風体は落武者とも見えません。多分戦塵のまだ納まらぬ山内に潜り込んで、掠奪を目論む泥棒とでも思ったのでしょう。

「絵を描いて居ります。私は、私は芳年と言う浮世絵師で――」

「何? 浮世絵師? 出鱈目な事を言えい。浮世絵師と言えば、美人や、役者や、道中の景色などを、面白可笑しく描いて、女子供の慰み物にするのが稼業ではないか、――どれ見せい、貴様の絵は――何んだこりゃ、どれもこれも、気味の悪い、斬り合いや、死骸や、梟し首ばかり、これでも浮世絵師と言うのか、怪しい奴ッ」

頭立った一人の武士、芳年の写生帳をバラバラと開いて、不審の眉を顰めます。

「そ、それは違います。