Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
わかすぎさいばんちょう
若杉裁判長
菊池 寛
Read 若杉裁判長 (わかすぎさいばんちょう) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,238 characters · 21 screens
若杉さんは、盗賊に見舞われた不快な印象を、まざまざと頭の中に浮べながら、こういうことを考えました。自分は学校を出てから十四、五年の間、罪ということばかりを、考えてきた。そして、その罪に適当な刑罰を課することを、自分の職責としてきた。が、実際自分は本当に罪ということを正当に考えてきたであろうか。それは、あまりに罪を抽象的に考えてきたのではあるまいか。罪人の側からのみ、罪を考えていたのではあるまいか。自分の目の前に畏まっている被告が、いかにも大人しく神妙なのに馴れて、彼らが被害者に及ぼした恐ろしい悪勢力については、なんの考慮をも費やさなかったのではあるまいか。
そう考えてくると、若杉さんは、自分の過去において下した判決の基礎を為した信念が、だんだん揺いでくるのを感じました。若杉さんを襲った賊、それは罪名からいえば、窃盗未遂でした。が、一家に及ぼした悪影響を考えれば、身の毛もよだつほどです。夫人が、それから受けた激動のために発熱し、その発熱のために衰弱して、ついにはそのために殪れるようなことがあれば、かの盗賊は形式はともかく、明らかに夫人を殺したのです。