Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Read 菊千代抄 (きくちよしょう) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,178 characters · 72 screens

Aozora Bunko

――自分は女であった。

――男ではなかった。

――自分は女であった。

同じことを繰り返しながら、夜具の中で輾転と身もだえをし、とつぜん起きて泣いた。二三日は食事もせず、水ばかり飲んでいた。気が昂ぶってくると自分で自分を制することができない。物を毀したり、寝衣をひき裂いたり、そうして父や母やまわりの者みんなに対して呪いの叫びをあげた。

「みんな御家のためでございますから、古くからのいいつたえで、そうしなければならなかったのでございますから」

松尾はいっしょに泣きながら、そして不浄の始末に絶えず気をくばりながら、夜も殆んど眠らずに付いていた。

「決してそんなに御心配あそばすことはございません。お世継ぎさえ御出生になれば、それですぐにお姫さまにおなりあそばすのですもの、お嘆きあそばすことは少しもございませんですよ」

「聞きたくない、うるさい、黙って呉れ」

菊千代はこう叫んで、松尾に物を投げつけたことさえあった。自分の忌わしく呪わしい立場は誰にもわかって貰えない、松尾にも理解できないようだ。それが救いがたいほど菊千代を孤独感につきおとし、絶望的にさせた。

――自分は女であるのに、女として生れてきたのに、……それを男と偽ってそだてられた、今でも自分は男の気持でいる、だが、……からだは女として成長しているのだ、いったい