Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ふとん

蒲団

田山 花袋

Read 蒲団 (ふとん) by 田山 花袋 (たやまかたい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 44,870 characters · 90 screens

Aozora Bunko

細君の心を尽した晩餐の膳には、鮪の新鮮な刺身に、青紫蘇の薬味を添えた冷豆腐、それを味う余裕もないが、一盃は一盃と盞を重ねた。

細君は末の児を寝かして、火鉢の前に来て坐ったが、芳子の手紙の夫の傍にあるのに眼を附けて、

「芳子さん、何て言って来たのです?」

時雄は黙って手紙を投げて遣った、細君はそれを受取りながら、夫の顔をじろりと見て、暴風の前に来る雲行の甚だ急なのを知った。

細君は手紙を読終って巻きかえしながら、

「出て来たのですね」

「うむ」

「ずっと東京に居るんでしょうか」

「手紙に書いてあるじゃないか、すぐ帰すッて……」

「帰るでしょうか」

「そんなこと誰が知るものか」

夫の語気が烈しいので、細君は口を噤んで了った。少時経ってから、

「だから、本当に厭さ、若い娘の身で、小説家になるなんぞッて、望む本人も本人なら、よこす親達も親達ですからね」

「でも、お前は安心したろう」と言おうとしたが、それは止して、

「まア、そんなことはどうでも好いさ、どうせお前達には解らんのだから……それよりも酌でもしたらどうだ」

温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ。

時雄は頻りに酒を呷った。