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ふとん
蒲団
田山 花袋
Read 蒲団 (ふとん) by 田山 花袋 (たやまかたい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 44,870 characters · 90 screens
時雄は時代の推移ったのを今更のように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、この女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬとはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。
男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編んでくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。
芳子は恋人に別れるのが辛かった。成ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。