Japanese reading practice

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いっぺいそつ

蒲団・一兵卒

田山 花袋

Read 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) by 田山 花袋 (たやまかたい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,948 characters · 59 screens

Aozora Bunko

伴(つ)れていってやるから、なんでも言うことを聞くかという。お作は喜んだ。

その楊樹の繁(しげ)みをお作はいつも思い出す。まだ何ごとをも知らぬ小娘、長旅の疲労に伴って起こった男のはげしい慾望、彩色を施した横綴(と)じの絵、――二十分の後、旅客の大跨(おおまた)で走って遁(に)げていくのをお作は泣きながら追った。けれど女の足でどうしてこれに追いつくことができよう。欺かれたと知って、忿怒(いかり)がたちまち心頭を衝(つ)いて起こった。お作は小石を拾ってあとから投げた。一つが旅商人の背中に当たった。と、振り返ったその顔、それが今でもありありと眼に見える。

その時が十四歳、それから十九歳の昨年まで、お作はその呪(のろ)うべき故郷を去ることができなかったのだ。叔父夫婦の虐待、終日の労働、夏のじりじりと眼も眩(くら)む日に雇われて、十二時間の田草取り、麦の収穫の忙しい時にはほとんど昼飯を食う暇もない。それに養蚕(かいこ)の手伝い、雨の日の桑つみ、荷車のあと押し、労働という労働はせぬものとてはなかった。またある時は、機(はた)の工場に雇われて、一日に一反半の高機織り、鼻唄を唄う元気さえなくなった。