Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うすこうばい
薄紅梅
泉 鏡花
Read 薄紅梅 (うすこうばい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 61,133 characters · 122 screens
吹乱す風である。渋蛇目傘を開いたままで、袖摺れに引着けた、またその袖にも、霏々と降りかかって、見る見る鬢のおくれ毛に、白い羽子が、ちらりと来て、とまって消えては、ちらりと来て、消えては、飛ぶ。
前髪にも、眉毛にも。
その眉の上なる、朱の両方の円柱に、
……妙吉祥……
……如蓮華……
一聯の文字が、雪の降りつもる中に、瑠璃と、真珠を刻んで、清らかに輝いた。
再び見よ、烈しくなった池の波は、ざわざわとまた亀甲を聳てる。
といううちに、ふと風が静まると、広小路あたりの物音が渡って来て、颯と浮世に返ると、枯蓮の残ンの葉、折れた茎の、且つ浮き且つ沈むのが、幾千羽の白鷺のあるいは彳み、あるいは眠り、あるいは羽搏つ風情があった。
青い頭、墨染の僧の少い姿が、御堂内に、白足袋でふわりと浮くと、蝋燭が灯を点じた。二つ三つまた五つ、灯さきは白く立って、却って檐前を舞う雪の二片三片が、薄紅の蝶に飜って、ほんのりと、娘の瞼を暖めるように見える。
「お蝋をあげましてござります。」
「は。」
僧は中腰に会釈して、
「早朝より、ようお詣り……」
「はい。」
「寒じが強うござります、ちとおあがりになって、御休息遊ばせ。