Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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かいろこう

薤露行

夏目 漱石

Read 薤露行 (かいろこう) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,925 characters · 40 screens

Aozora Bunko

中四尺を隔てて近寄るに力なく、離るるに術なし。たとい忌わしき絆なりとも、この縄の切れて二人離れ離れにおらんよりはとは、その時苦しきわが胸の奥なる心遣りなりき。囓まるるとも螫さるるとも、口縄の朽ち果つるまでかくてあらんと思い定めたるに、あら悲し。薔薇の花の紅なるが、めらめらと燃え出して、繋げる蛇を焼かんとす。しばらくして君とわれの間にあまれる一尋余りは、真中より青き烟を吐いて金の鱗の色変り行くと思えば、あやしき臭いを立ててふすと切れたり。身も魂もこれ限り消えて失せよと念ずる耳元に、何者かからからと笑う声して夢は醒めたり。醒めたるあとにもなお耳を襲う声はありて、今聞ける君が笑も、宵の名残かと骨を撼がす」と落ち付かぬ眼を長き睫の裏に隠してランスロットの気色を窺う。七十五度の闘技に、馬の脊を滑るは無論、鐙さえはずせる事なき勇士も、この夢を奇しとのみは思わず。快からぬ眉根は自ら逼りて、結べる口の奥には歯さえ喰い締ばるならん。

「さらば行こう。後れ馳せに北の方へ行こう」と拱いたる手を振りほどいて、六尺二寸の躯をゆらりと起す。

「行くか?」とはギニヴィアの半ば疑える言葉である。