Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Read 藤九郎の島 (とうくろうのしま) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,765 characters · 19 screens
丸木は生皮を剥いで水に漬け、貝殻を焼いて漆食をこしらえた。時化こそはなによりの望みで、暴風のあとでうち寄せる浮木のようなものまで、丹念にとり集めて古釘で打ちつけ、三年がかりで、長さ七十尺の船をこしらえあげた。元文元年の二月のことだった。
船ができたところで、渡航の準備にかかった。大桶に二年がかりで天水をとり溜め、魚は海水に漬けて空乾しにし、元文四年の春のはじめ頃に、いっさいの準備が完了した。出帆を六月中旬ときめ、このあと島に流れ着くもののために、岩穴前の畑に籾を三斗蒔き、四組の舟子がこの島に漂着した顛末、この島での食餌のありかた、籾のとりかた、衣服のつくりかた、天水のとりかた、船づくりの方法などをくわしく木片に書きつけ、船の雛形と船づくりの道具一式、鞴、燵石、鍋一つを木箱に入れて岩穴の奥におさめ、入口に木標を立てて印にした。
元文四年六月十日、遠州組三人、土佐組一人、大阪組八人、日向組四人、合せて十六人が手製の船に乗って島を離れた。遠州組の三人は在島二十一年、甚八は六十七歳、仁一郎は六十一歳、平三郎は四十二歳になっていた。七月上旬、青ヶ島に着き、そこから八丈島に送られ、流人御免の御用船に乗せられて、九月上旬、命恙く江戸の土を踏んだ。