Japanese reading practice

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とししゅん

蜘蛛の糸・杜子春

芥川 竜之介

Read 蜘蛛の糸・杜子春 (とししゅん) by Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 24,703 characters · 52 screens

Aozora Bunko

「そこにいるのは何者だ」と、叱りつけるではありませんか。

しかし杜子春は仙人の教通り、何とも返事をしずにいました。

ところが又暫くすると、やはり同じ声が響いて、

「返事をしないと立ちどころに、命はないものと覚悟しろ」と、いかめしく嚇しつけるのです。

杜子春は勿論黙っていました。

と、どこから登って来たか、爛々と眼を光らせた虎が一匹、忽然と岩の上に躍り上って、杜子春の姿を睨みながら、一声高く哮りました。のみならずそれと同時に、頭の上の松の枝が、烈しくざわざわ揺れたと思うと、後の絶壁の頂からは、四斗樽程の白蛇が一匹、炎のような舌を吐いて、見る見る近くへ下りて来るのです。

杜子春はしかし平然と、眉毛も動かさずに坐っていました。

虎と蛇とは、一つ餌食を狙って、互に隙でも窺うのか、暫くは睨合いの体でしたが、やがてどちらが先ともなく、一時に杜子春に飛びかかりました。が虎の牙に噛まれるか、蛇の舌に呑まれるか、杜子春の命は瞬く内に、なくなってしまうと思った時、虎と蛇とは霧の如く、夜風と共に消え失せて、後には唯、絶壁の松が、さっきの通りこうこうと枝を鳴らしているばかりなのです。